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RTK GPSとは何か、どのように測位精度を向上させるのか?

2026-04-17

標準的なGNSS受信機は、開放環境において約2~5mの測位精度を提供します。一般的なコンシューマ用途では、この精度で十分です。しかし、測量、建設の施工レイアウト、精密農業、自律航行といった分野では、2mの誤差が基礎の位置ずれ、排水勾配の不整合、あるいは誘導システムの逸脱につながる可能性があります。

RTK GPS/GNSSは、この精度ギャップを解消します。既知の基準点からリアルタイム補正情報を適用することで、測位精度をメートル級からセンチメートル級へと高め、GNSSを汎用的な位置測定手段から高精度な計測ツールへと進化させます。

一般的には「RTK GPS」として認識されていますが、現在のRTKシステムはGNSSを利用しています。GNSSは、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDouといった複数の衛星測位システムを含む総称です。

本記事では、RTKの基本概念、信号レベルでの動作原理、適用価値の高い利用シーン、そしてRTK対応GNSSシステムを選定する際のポイントについて解説します。
 

標準的なGPSの仕組みと、その限界

GNSS(Global Navigation Satellite Systems:全球測位衛星システム。GPSはその構成要素の一つ)は、周回衛星から送信される信号の到達時間を測定することで位置を算出します。受信機は、3次元位置と受信機クロック補正を求めるために、少なくとも4機の衛星からの信号を受信する必要があります。理論上、この計算自体は比較的明快ですが、実際の運用では複数の誤差要因によって測位精度が低下します。

 

主な誤差要因は以下のとおりです。
 


これらの誤差が重なることで、単独測位におけるGNSSの水平測位精度は、通常約1.5~5mに制限されます。センチメートル級の精度が求められる用途では、単独測位だけでは対応できません。
 

RTK GPS/GNSSとは何か、どのようにしてセンチメートル単位の精度を実現するのか

RTK(Real-Time Kinematic)は、標準的なGNSS受信機が主に用いるコードベースの疑似距離測定だけでなく、搬送波位相測定も利用する差分GNSS技術です。

基本原理:差分補正

RTKは、2台の受信機が同時に同一の衛星を観測することで機能します。一方は既知の正確な位置に設置された基準局(ベース局)、もう一方はユーザーとともに移動する移動局(ローバー)です。両者は近接した位置でほぼ同時に同じ衛星を観測するため、大気遅延などの誤差要因はほぼ共通となります。

ベース局は、自身の既知位置と衛星観測から得られる位置との差分を算出し、その補正情報をリアルタイムでローバーに送信します。

ローバーはこの補正情報を自身の観測データに適用することで、共通の誤差要因を打ち消します。その結果、高精度な位置解が得られます。

搬送波位相測定が重要な理由

標準的なGNSS受信機は、疑似距離(pseudorange)と呼ばれる値を測定します。これは衛星から送信されるコード信号の到達時間に基づく見かけの距離であり、その分解能はコードのチップ長に依存します(L1帯のC/Aコードでは約300m、Pコードでは約30m程度)。

一方、RTK受信機はさらに高精度な測定を行います。搬送波そのものを追跡することで、より高い周波数の信号を利用します。例えばL1帯の搬送波波長は約19cmです。RTKでは、この搬送波の整数サイクル数と位相の小数部分を組み合わせて測定することで、波長のごく一部に相当する高い分解能で衛星と受信機間の距離を求めます。

ただし、この手法には「整数値アンビギュイティ(整数値不定性)」の解決という課題があります。これは、衛星と受信機の間に存在する搬送波の整数サイクル数を正確に特定する問題です。最新のRTKアルゴリズムは、マルチ周波数およびマルチGNSSの観測データを活用し、このアンビギュイティを数秒で解決します。これにより、起動後短時間でセンチメートル級の高精度測位を実現します。
 

RTK GPSが最も価値を発揮する分野

RTKは、従来の測量用途にとどまらず、現在では多様な業界における高精度ワークフローの基盤技術となっています。各分野ごとに求められる精度や運用要件は異なりますが、RTKはそれぞれに対応可能な測位性能を提供します。

測量とエンジニアリング

土地測量は、依然としてRTKの代表的な用途です。開放環境では、RTKによりトータルステーションの使用を削減、または代替することが可能であり、境界測量、地形測量、基準点設置において作業効率を向上させつつ、測量精度を維持できます。地籍測量やエンジニアリング測量など、センチメートル級の精度が法的または契約上求められる場合、開放エリアにおいてRTKは標準的な手法となっています。

 

土地測量の現場でCHCNAV i85 GNSS受信機を使用する測量士。 土地測量の現場でCHCNAV i85 GNSS受信機を使用する測量士。

左: i85受信機と HCE600フィールドコントローラーを使用し、建設プロジェクトで高精度なデータ収集を行う測量士。

右:現場で信頼性の高いRTK補正を行うためにiBaseベースステーションを セットアップするエンジニア。

建設とマシンコントロール

建設現場では、RTKは油圧ショベル、ブルドーザー、グレーダーなどのマシンコントロールシステムに活用され、設計面に対してリアルタイムで施工をガイドします。また、トータルステーションやポール作業者を必要とせず、建物の位置出しやインフラルート、道路線形の施工レイアウトにも対応可能です。

 

RTK測位支援で道路工事を行うショベルカー。 RTK測位支援で道路工事を行うショベルカー。

左:3Dガイダンスシステム「TX73」を搭載した油圧ショベル。
右:システム画面上にリアルタイムで指示が表示され、目標面に対して正確な掘削を支援

精密農業

農業分野では、自動操舵システムがRTKを利用し、トラクター、スプレーヤー、コンバインなどの作業機を高精度に誘導します。センチメートル級の精度により、重複作業を最小化し、種子、肥料、薬剤の投入を最適化できます。また、低視界条件下でも正確な作業継続が可能です。

 

精密農業のトラクターガイダンスに使用されるNX610ディスプレイ。 精密農業のトラクターガイダンスに使用されるNX610ディスプレイ。

左:NX612自動操舵システムにより、圃場での正確な平行走行を支援
右:NX612を搭載したトラクターによる高精度な土壌整備と効率的な播種作業

自律航法とロボティクス

自動運転車両、配送ロボット、無人航空機などは、安全かつ安定した運用のために継続的かつ高精度な位置情報を必要とします。RTKは、IMU、LiDAR、カメラなどと組み合わせたセンサフュージョンにおいて、基準となるリアルタイムのセンチメートル級位置情報を提供します。

 

CGI-610測位システムを搭載した自律型港湾車両。 CGI-610測位システムを搭載した自律型港湾車両。

左:CGI-610とGNSS/INSシステムを搭載した自律走行の港湾車両
右:過酷な鉱山環境において、CGI-610により高信頼な自律走行を実現するダンプトラック


CHCナビゲーションのGNSS + INSナビゲーション・ソリューションは、これらの用途向けに最適化されています。CGI-610は高精度RTK測位と慣性計測を緊密に統合し、トンネル、高架下、都市部などで一時的にGNSS信号が遮断される環境でも、連続した高精度測位を維持します。
 

RTKシステムの主要構成要素

RTKシステムは、相互に連携する3つの主要コンポーネントで構成され、それぞれがシステム性能に直接影響します。

基準局

基準局は、既知の正確な座標に設置されたGNSS受信機です。衛星信号を継続的に追跡し、補正データを生成してローバーへ送信します。専用機を既知点に設置する方式のほか、NRTK(Network RTK)ネットワークによる仮想基準局を利用することも可能です。

基準局の性能は重要です。マルチ周波数・マルチGNSS(GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou)対応の受信機は、観測衛星数の増加により幾何配置(ジオメトリ)が改善され、アンビギュイティ解決の高速化と補正品質の向上に寄与します。CHCNAV iBaseのような専用基準局は常時運用を前提に設計されており、安定した高品質補正データを継続的に提供します。

ローバー

ローバーは、オペレーターとともに移動する受信機であり、測量ポール、建設機械、ドローン、自律走行車両などに搭載されます。基準局からの補正データを受信し、自身の観測データに適用することで、リアルタイムに補正済みの位置情報を出力します。

補正を正しく適用するためには、ローバーが基準局と同じ衛星システムおよび周波数を追跡している必要があります。両者の性能が一致していることで、差分補正が正確に機能します。

データリンク

RTK補正情報は、通常1秒以内の低遅延でローバーに伝送される必要があります。データリンクには、UHF/VHF無線(建設現場や通信圏外で一般的)、セルラーモデム(NTRIPプロトコルを用いたCORSネットワーク接続)、または短距離用途向けのWi-Fi/Bluetooth接続などがあります。

データリンクの選択は、運用距離、信頼性、インフラ要件に影響します。無線方式は自立運用が可能ですが、通信距離は一般的に5~10km程度に制限されます。一方、NTRIPによるネットワークRTKは、地域のCORSネットワークを利用することで、ローカル基準局の設置を不要とします。
 

RTK精度:実環境での目安

良好な条件(開放環境、短基線、良好な衛星配置)では、RTKは以下の精度を実現します。
 


実際の性能は、以下の要因によって変動します。
 

RTKと他の補正方法

GNSSの測位精度を向上させる手法はRTKだけではありません。各方式の特性を理解することで、用途に応じた最適な選択が可能になります。

DGPS(Differential GPS)

DGPSは、搬送波位相ではなくコードベースの補正を利用する方式です。単独測位の数メートル精度を約0.5~1mまで改善できますが、センチメートル級の精度には到達しません。構成が比較的シンプルで、長距離でも運用可能なため、サブメートル精度で十分な用途(海洋ナビゲーション、GISデータ収集など)に適しています。

PPP(Precise Point Positioning)

PPPは、全球の観測ネットワークから提供される高精度な衛星軌道・クロック情報を利用し、単一受信機でデシメートル~センチメートル級の精度を実現する方式です。ローカル基準局は不要ですが、初期収束時間が課題となります。一般的に、起動後20~30分程度で高精度に到達しますが、RTKは数秒で初期化が完了します。近年ではPPP-RTKのようなハイブリッド方式も登場していますが、リアルタイムで即時にセンチメートル精度を必要とする用途では、RTKが依然として有効です。

PPK(Post-Processed Kinematic)

PPKは、現場でGNSSの生データを記録し、後処理によって補正を行う方式です。RTKと同等の精度が得られますが、リアルタイム通信は不要です。ドローン測量や航空測量など、リアルタイム補正の適用が難しい場面で広く利用されています。一方で、現場作業中に誤差の検出や補正ができないという制約があります。
 

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CHCナビゲーションについて

CHC Navigation(CHCNAV)は、生産性と効率の向上を目的とした先進的なマッピング、ナビゲーション、ポジショニングソリューションを開発しています。CHCNAVは、地理空間、農業、マシンコントロール、オートノミーなどの分野に向けて革新的な技術を提供し、プロフェッショナルの業務を支援するとともに、業界の発展を後押ししています。世界140カ国以上で事業を展開し、2,200人以上の専門人材を擁するCHC Navigationは、地理空間業界および関連分野においてリーダー企業の一つとして認知されています。CHC Navigation[Huace:300627.SZ]の詳細については、当社ウェブサイトをご覧ください。https://www.chcnav.com/about/overview

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